それから彼女の店に通うようになり、常連になった。もっとも見落としやすいこの店に客が来ることも稀らしいが。
今年で二十三になるらしい彼女は年上に対しても敬語を使わず、はたから見ればとても傲慢だ。けれど、そうでもしないと年相応に見られないからだろうと今なら思う。
私がオーナーだって最初から気づいたのはあんたくらいよ、と皮肉まじりに言われた。
ここで店を始めて数年経つのに、近所で店を開いている商店街の人でさえ彼女が店主だということを知っている人はいないらしい。
寂しげに笑うんだな? と訊くと、だって笑うとますます子供に見えるからね、と彼女は返した。しょっちゅう「大人になりたい」とぼやいていることからするに、きっと皆に気付いてほしいのだろう。
そして、言葉を交わすうちに、そんな彼女に魅力を感じている自分にも気づいていた。
十月に入ったある日、店を覗くと彼女は今日も作業中だった。
めったに客が来ないので、暇さえあれば売り物の小物作りに励んでいるらしい。
「今日は何を作ってるんだ?」
「んー? えっとね、かぼちゃ」
言葉だけ返して、彼女は作業を続けている。
「かぼちゃ?」
「うん。ほら、今月はハロウィンでしょ? それの飾り」
「あぁ、なるほど」
納得して、しばらく彼女が作業している様子を眺める。
すると、
「今年こそは、お菓子をあげる側になるんだから」
ぼそりとこぼれた呟きに、ふっと笑う。彼女だからこそ持つ、少し切ない望み。
「無理して大人になる必要はないんじゃないか?」
「あるの! 二十歳過ぎた女のプライドよ!」
「そーかい」
くくっと笑って流しながら、彼女の望みは叶うのだろうかと少し気になった。
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